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4F 民   法 (相 殺、有価証券)
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1.相殺
1.1 相殺の要件等(505条)
 「二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。
 ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない」
  「2項 当事者の意思表示を参照のこと」
 相殺の方法及び効力(506条)
 「相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。
 この場合において、その意思表示には、条件又は期限を付することができない」
 「2項 前項の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる」



自働債権  相殺したいと切り出した当人が持っている自分の債権
受働債権  相殺したいと切り出された相手方が持っている債権
相殺適状  相殺ができる状態にあること。

1.2 履行地の異なる債務の相殺(507条)
 「相殺は、双方の債務の履行地が異なるときであっても、することができる。
 この場合において、相殺をする当事者は、相手方に対し、これによって生じた損害を賠償しなければならない」
1.3 弁済期到来前における相殺
 原則は、お互いの債権が弁済期にあること。
 また、自働債権の弁済期(請求できる時期)が来ておれば、受動債権の弁済期が来ていなくとも相殺できる。
⇒「今月末までにそちらが払わなければならない借金はそのままでいいから、来月末までの俺の借金と相殺しよう」はOK。
 「今月末までに俺が弁済しなければならない借金を、来月末までに払わなければならないそちらの借金と相殺してくれ」はだめ。   
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 相殺は当事者の一方から相手方に対してなす意思表示によって効力を生じ、相手方の承諾を要しない。(基礎)@
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正しい 誤り
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 相殺の意思表示には条件又は期限を付けることができない。(基礎) @
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 相殺の意思表示は相殺適状に達した時にさかのぼってその効力を生じる。 (基礎) @
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正しい 誤り
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 AがBに対して平成20年5月5日を弁済期とする300万円の売掛代金債権を有し、BがAに対して平成20年7月1日を弁済期とする400万円の貸金債権を有している。この場合に、平成20年5月10日にAがBに対してする相殺は効力がある。(02-31-3の応用)@

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02
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   相殺は双方の債務の履行地が異なるときでもすることができる。 (基礎) @

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2.相殺の禁止
2.1 当事者の意思表示(505条2項) 法改正(R02.04.01)
 「505条1項(相殺の要件)の規定にかかわらず、当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる」  
改正点とポイント
@相殺は一方的にすることができ、相手方の承諾は不要である。
 ただし、「相殺はしない」と当事者間で意志表示した場合であっても、そのような意思表示を知らない、あるいは、知らないことに対して重大な過失のない第三者には対抗できない。
A改正点は、「善意な第三者」だけでなく、「知らないことに対して無重過失の第三者」にも対抗できないとしたこと。
2.2 不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止(509条)法改正(R02.04.01)
 「次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。
@悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務
A人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く)
改正点とポイント
@不法行為について、「悪意による不法行為に基づく損害賠償請求権に限り、相殺をもって債権者に対抗することができない」ことに限定した。
・悪意による不法行為を行って損害賠償をしないといけない者は、まずそれをきちんとやるべきであって、ほかの債権とちゃらにすることは許さない。(ただし、不法行為による損害賠償を受けることができる者からは、相殺を申し出ることができる)
・ここでの「悪意」とは、「加害の意思」を含むものとされている。
A上記@の限定により、「過失による不法行為に基づく損害賠償請求権については、相殺をもって債権者に対抗することができる」ことになった。
B2号「人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権」についても、相殺をもって債権者に対抗することができないことに。
Cただし、1号、2号であっても、「債権者がその債務に係る債権を他人(不法行為の被害者あるいは承継人)から譲り受けたときは、被害者保護の必要性がないことから、相殺も許されることに。 
 差押禁止債権を受働債権とする相殺の禁止(510条)
 「債権が差押えを禁じたものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない」 
 差し押さえが禁止されている債権とは賃金、年金など
 差押えを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止(511条)法改正(R02.04.01,1項改正、2項新規)
 「差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる」
 「2項 前項の規定にかかわらず、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。ただし、第三債務者が差押え後に他人の債権を取得したときは、この限りでない」
改正点とポイント
@1項:「差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる」ことを明文化して追加
・差押え前に取得した債権の弁済期(自働債権)と差押えを受けた債権(受働債権)の弁済期は、いずれも相殺時点では弁済期が到来していないといけない(相殺適状)が、その前後は問わない。
A2項(新規):「差押え後に取得した債権」であっても、差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、相殺できる」
 相殺の充当(512条) 法改正(R02.04.01,1項を改正し、1項、2項、3項に分割)
 「債権者が債務者に対して有する一個又は数個の債権と、債権者が債務者に対して負担する一個又は数個の債務について、債権者が相殺の意思表示をした場合において、当事者が別段の合意をしなかったときは、債権者の有する債権とその負担する債務は、相殺に適するようになった時期の順序に従って、その対当額について相殺によって消滅する」
 「2項 前項の場合において、相殺をする債権者の有する債権がその負担する債務の全部を消滅させるのに足りないときであって、当事者が別段の合意をしなかったときは、次に掲げるところによる。
@債権者が数個の債務を負担するとき(次号に規定する場合を除く)は、488条4項2項から4号までの規定を準用する。
A債権者が負担する一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべきときは、489条の規定を準用する。
 「3項 1項の場合において、相殺をする債権者の負担する債務がその有する債権の全部を消滅させるのに足りないときは、前項の規定を準用する」
 一個の債権の弁済として数個の給付をすべきものがある場合における相殺512条の2)法改正(R02.04.01新規)
 「債権者が債務者に対して有する債権に、一個の債権の弁済として数個の給付をすべきものがある場合における相殺については、前条の規定を準用する。債権者が債務者に対して負担する債務に、一個の債務の弁済として数個の給付をすべきものがある場合における相殺についても、同様とする」         
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 相殺禁止の特約があれば、そのことを知らずにその債権を譲り受けた場合でも、その債権をもって相殺することはできない。(基礎) @

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 悪意の不法行為による損害賠償義務の債務者であっても、原則として、被害者に対して有する債権と当該債務を相殺することができる。(R02改)(基礎) @

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 債務不履行の場合は、債務者から損害賠償請求権を受働債権として相殺することができるが、悪意の不法行為による不法行為の場合は、原則として加害者から損害賠償請求権を受働債権として相殺することはできない。R02改)(9-31-4の類型)@

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 AがBに対して平成18年5月5日を弁済期とする300万円の貸金債権を有していたところ、平成18年7月1日にAがBに対して暴力行為をはたらき、平成20年7月5日に、Aに対してこの暴力行為でBが被った損害300万円の賠償を命ずる判決がなされた。
 この場合に、平成20年7月5日にAがBに対してする相殺は効力がある。(9-31-4の類型)@

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 A銀行がBに対して平成19年7月30日に期間1年の約定で貸し付けた400万円の貸金債権を有し、他方、BがA銀行に対して平成20年7月25日を満期とする400万円の定期預金債権を有していたところ、Bの債権者CがBのA銀行に対する当該定期預金債権を差し押さえた。
 この場合に、平成20年8月1日にA銀行がBに対してする相殺は効力がある。@

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 同時履行の抗弁権の付着する債権であっても、これを自働債権として相殺することができる。(応用)@

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 自己の有する債権に同時履行の抗弁権が付着している場合には、これを自働債権として相殺することができない。(8-31-5の類型)@

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3.更改・免除・混同
 更改(513条)法改正(R02.04.01)
 「当事者が従前の債務に代えて、新たな債務であって次に掲げるものを発生させる契約をしたときは、従前の債務は、更改によって消滅する」
@従前の給付の内容について重要な変更をするもの
A従前の債務者が第三者と交替するもの
B従前の債権者が第三者と交替するもの.
⇒「更改」とは、債務の重要な部分について契約変更(債務の目的の変更、,債権者あるいは債務者の交替、債務の目的の変更)を行うこと。これにより、従前の債務は消滅する。
 債務者の交替による更改(514条)法改正(R02.04.01、1項修正、2項新設)
 「債務者の交替による更改は、債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができる。この場合において、更改は、債権者が更改前の債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる」
 「2項 債務者の交替による更改後の債務者は、更改前の債務者に対して求償権を取得しない」 
 債権者の交替による更改(515条法改正(R02.04.01、1項新規、2項は旧515条)
 「債権者の交替による更改は、更改前の債権者、更改後に債権者となる者及び債務者の契約によってすることができる」
 「2項 債権者の交替による更改は、確定日付のある証書によってしなければ、第三者に対抗することができない」
 更改後の債務への担保の移転(518条)法改正(R02.04.01、2項新設)
 「債権者(債権者の交替による更改にあっては、更改前の債権者)は、更改前の債務の目的の限度において、その債務の担保として設定された質権又は抵当権を更改後の債務に移すことができる。ただし、第三者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない」
 「2項 前項の質権又は抵当権の移転は、あらかじめ又は同時に更改の相手方(債権者の交替による更改にあっては、債務者)に対してする意思表示によってしなければならない」
 免除(519条
 「権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は、消滅する」 
 混同(520条
 「債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない」


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 賃貸人の承諾がある転貸において、賃貸人が当該建物を転借人に譲渡し、賃貸人の地位と転借人の地位とが同一人に帰属したときであっても、賃借人と転借人間に転貸借関係を消滅させる特別の合意がない限り、転貸借関係は当然には消滅しない。(発展)@

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4 有価証券
4.1 指図証券
 指図証券の譲渡(520条の2)法改正(R02.04.01新設)
 「指図証券の譲渡は、その証券に譲渡の裏書をして譲受人に交付しなければ、その効力を生じない」
 指図証券の裏書の方式(520条の3法改正(R02.04.01新設)
 「指図証券の譲渡については、その指図証券の性質に応じ、手形法中裏書の方式に関する規定を準用する」
 指図証券の所持人の権利の推定(520条の4)法改正(R02.04.01新設)
 「指図証券の所持人が裏書の連続によりその権利を証明するときは、その所持人は、証券上の権利を適法に有するものと推定する」
 指図証券の善意取得(520条の5法改正(R02.04.01新設)
 「何らかの事由により指図証券の占有を失った者がある場合において、その所持人が前条の規定によりその権利を証明するときは、その所持人は、その証券を返還する義務を負わない。ただし、その所持人が悪意又は重大な過失によりその証券を取得したときは、この限りでない」  
 指図証券の譲渡における債務者の抗弁の制限(520条の6)法改正(R02.04.01新設)
 「指図証券の債務者は、その証券に記載した事項及びその証券の性質から当然に生ずる結果を除き、その証券の譲渡前の債権者に対抗することができた事由をもって善意の譲受人に対抗することができない」
 指図証券の弁済の場所(520条の8法改正(R02.04.01新設)
 「指図証券の弁済は、債務者の現在の住所においてしなければならない」
 指図証券の提示と履行遅滞(520条の9法改正(R02.04.01新設)
 「指図証券の債務者は、その債務の履行について期限の定めがあるときであっても、その期限が到来した後に所持人がその証券を提示してその履行の請求をした時から遅滞の責任を負う」
 指図証券の債務者の調査の権利等(520条の10法改正(R02.04.01新設))
 「指図証券の債務者は、その証券の所持人並びにその署名及び押印の真偽を調査する権利を有するが、その義務を負わない。ただし、債務者に悪意又は重大な過失があるときは、その弁済は、無効とする」
 指図証券の喪失(520条の11)法改正(R02.04.01新設)
 「指図証券は、非訟事件手続法に規定する公示催告手続によって無効とすることができる」
。指図証券喪失の場合の権利行使方法(520条の12法改正(R02.04.01新設)
 「金銭その他の物又は有価証券の給付を目的とする指図証券の所持人がその指図証券を喪失した場合において、非訟事件手続法に規定する公示催告の申立てをしたときは、その債務者に、その債務の目的物を供託させ、又は相当の担保を供してその指図証券の趣旨に従い履行をさせることができる」
4.2 記名式所持人払証券
 記名式所持人払証券の譲渡(520条の13)法改正(R02.04.01新設)
 「記名式所持人払証券(債権者を指名する記載がされている証券であって、その所持人に弁済をすべき旨が付記されているものをいう)の譲渡は、その証券を交付しなければ、その効力を生じない」
 記名式所持人払証券の所持人の権利の推定(520条の14法改正(R02.04.01新設)
 「記名式所持人払証券の所持人は、証券上の権利を適法に有するものと推定する」
 記名式所持人払証券の善意取得(520条の15法改正(R02.04.01新設)
 「何らかの事由により記名式所持人払証券の占有を失った者がある場合において、その所持人が前条の規定によりその権利を証明するときは、その所持人は、その証券を返還する義務を負わない。ただし、その所持人が悪意又は重大な過失によりその証券を取得したときは、この限りでない」
 記名式所持人払証券の譲渡における債務者の抗弁の制限(520条の16)法改正(R02.04.01新設)
 「記名式所持人払証券の債務者は、その証券に記載した事項及びその証券の性質から当然に生ずる結果を除き、その証券の譲渡前の債権者に対抗することができた事由をもって善意の譲受人に対抗することができない」
 記名式所持人払証券の質入れ(520条の17法改正(R02.04.01新設)
 [520条の17 520条の13から前条までの規定は、記名式所持人払証券を目的とする質権の設定について準用する」 
 指図証券の規定の準用(520条の18法改正(R02.04.01新設)
 「520条の8から第520条の12までの規定は、記名式所持人払証券について準用する」。
4.3 その他
 その他の記名証券(520条の19)法改正(R02.04.01新設)
 「債権者を指名する記載がされている証券であって指図証券及び記名式所持人払証券以外のものは、債権の譲渡又はこれを目的とする質権の設定に関する方式に従い、かつ、その効力をもってのみ、譲渡し、又は質権の目的とすることができる」
 「2項  520条の11及び520の12の規定は、前項の証券について準用する」
 無記名証券(520条20法改正(R02.04.01新設)
 「記名式所持人払証券の規定は、無記名証券について準用する」