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3E

民   法 (抵当権)

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1. 抵当権一般論
 抵当権の内容(369条)
 「抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する」
⇒抵当権とは、債務者また第三者(物上保証人)が提供した担保不動産を占有はしない(自由に使用させる)が、債務を履行しないときは、他人より優先して、この不動産から自分の債権を取り立てることができる権利である。
 「2項 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する」
 抵当権の効力の及ぶ範囲(370条)法改正(R02.04.01)
 「抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(抵当不動産)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び債務者の行為について424条3項に規定する詐害行為取消請求をすることができる場合は、この限りでない」

@付加一体物とは、242条にある不動産の付合(切り離しが困難なもの)がこれに該当する。
 たとえば、
 建物の場合:雨戸、入り口の扉、増築部分など
 土地の場合:植木、とりはずしが困難な庭石など
Aなお、87条にある従物(ふすま、障子、畳などとりはずしはできるが主物に付属して常用するもの)もこの付加一体物に含まれるかについては争いがある。
B改正点は、424条(詐害行為の取消請求)は、同条3項に「被保全債権が詐害行為の前の原因に基づいて生じたもの場合に限り、取消の請求ができる」というこれまでの判例の考え方を明文化した規定が新設されたことにあわせるため。
 債権不履行の場合(371条)
 「抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ」  
 抵当権の性質(372条)
 「296条(留置権の不可分性)、304条(先取特権の物上代位)、351条(物上保証人の求償権)の規定は、抵当権について準用する」
物上代位についてはこちらを
09
29
3
 抵当権は、不動産のほか、地上権及び永小作権を目的として設定することができる。(基礎)

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正しい 誤り
7
29
5
 地上権を、抵当権の目的とすることはできない。(09-29-3の類型)

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正しい 誤り
09
29
5
 将来発生する債権のために、現在において抵当権を設定することはできないとするのが判例の立場である。

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正しい 誤り
18
30
2
 Aは、B所有の甲土地について地上権の設定を受けて、同土地上に乙建物を建築した。Aが同建物を建築するについては、そのための資金としてC銀行から融資を受けた。
 AがC銀行のために抵当権を設定するには、乙建物のみを抵当権の目的とすることができ、Aの甲土地に対する地上権を抵当権の目的とすることはできない。

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正しい 誤り







09
29
2
 抵当権の効力は、設定行為に別段の定めがない限り、抵当不動産の附加一体物には及ばない。(基礎)

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正しい 誤り
20
31
1
 AはBに金銭を貸し付け、この貸金債権を担保するためにB所有の土地の上に建っているB所有の建物に抵当権の設定を受けて、その登記を備えた。
 Aの抵当権が実行された場合、抵当権設定時に建物内に置いていたB所有の家電製品のテレビには抵当権の効力は及ばない。

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正しい 誤り
30
30
1
 抵当権の効力は抵当不動産の従物にも及ぶが、抵当不動産とは別個に従物について対抗要件を具備しなければ、その旨を第三者に対して対抗することができない。

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正しい 誤り




















22
30
 A銀行はBに3,000万円を融資し、その貸金債権を担保するために、B所有の山林(樹木の生育する山の土地。本件樹木については立木法による登記等の対抗要件を具備していない)に抵当権の設定を受け、その旨の登記を備えたところ、Bは通常の利用の範囲を超えて山林の伐採を行った。
 このような場合、基本的には、「分離物が第三者に売却されても、抵当不動産と場所的一体性を保っている限り、抵当権の公示の衣に包まれているので、抵当権を第三者に対抗できるが、搬出されてしまうと、抵当権の効力自体は分離物に及ぶが、第三者に対する対抗力は喪失する」とされている。
 この考え方によれば、抵当山林上に伐採木材がある段階で木材がBから第三者に売却された場合には、A銀行は第三者への木材の引渡しよりも先に抵当権の登記を備えているので、第三者の搬出行為の禁止を求めることができる。(応用)

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正しい 誤り
22
30
 A銀行はBに3,000万円を融資し、その貸金債権を担保するために、B所有の山林(樹木の生育する山の土地。本件樹木については立木法による登記等の対抗要件を具備していない)に抵当権の設定を受け、その旨の登記を備えたところ、Bは通常の利用の範囲を超えて山林の伐採を行った。
 このような場合、基本的には、「分離物が第三者に売却されても、抵当不動産と場所的一体性を保っている限り、抵当権の公示の衣に包まれているので、抵当権を第三者に対抗できるが、搬出されてしまうと、抵当権の効力自体は分離物に及ぶが、第三者に対する対抗力は喪失する」とされている。
 この考え方によれば、抵当山林上に伐採木材がある段階で木材がBから第三者に売却され、占有改定による引渡しがなされたとしても、第三者のために即時取得は成立しない。

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正しい 誤り
22
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 A銀行はBに3,000万円を融資し、その貸金債権を担保するために、B所有の山林(樹木の生育する山の土地。本件樹木については立木法による登記等の対抗要件を具備していない)に抵当権の設定を受け、その旨の登記を備えたところ、Bは通常の利用の範囲を超えて山林の伐採を行った。
 このような場合、基本的には、「分離物が第三者に売却されても、抵当不動産と場所的一体性を保っている限り、抵当権の公示の衣に包まれているので、抵当権を第三者に対抗できるが、搬出されてしまうと、抵当権の効力自体は分離物に及ぶが、第三者に対する対抗力は喪失する」とされている。
 この考え方によれば、Bと取引関係にない第三者によって伐採木材が抵当山林から不当に別の場所に搬出された場合に、A銀行は第三者に対して元の場所へ戻すように請求できる。
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正しい 誤り
22
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 A銀行はBに3,000万円を融資し、その貸金債権を担保するために、B所有の山林(樹木の生育する山の土地。本件樹木については立木法による登記等の対抗要件を具備していない)に抵当権の設定を受け、その旨の登記を備えたところ、Bは通常の利用の範囲を超えて山林の伐採を行った。
 このような場合、基本的には、「分離物が第三者に売却されても、抵当不動産と場所的一体性を保っている限り、抵当権の公示の衣に包まれているので、抵当権を第三者に対抗できるが、搬出されてしまうと、抵当権の効力自体は分離物に及ぶが、第三者に対する対抗力は喪失する」とされている。
 この考え方によればBによって伐採木材が抵当山林から別の場所に搬出された後に、第三者がBから木材を買い引渡しを受けた場合において、当該木材が抵当山林から搬出されたものであることを第三者が知っているときは、当該第三者は木材の取得をA銀行に主張できない。
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正しい 誤り
22
30
 A銀行はBに3,000万円を融資し、その貸金債権を担保するために、B所有の山林(樹木の生育する山の土地。本件樹木については立木法による登記等の対抗要件を具備していない)に抵当権の設定を受け、その旨の登記を備えたところ、Bは通常の利用の範囲を超えて山林の伐採を行った。
 このような場合、基本的には、「分離物が第三者に売却されても、抵当不動産と場所的一体性を保っている限り、抵当権の公示の衣に包まれているので、抵当権を第三者に対抗できるが、搬出されてしまうと、抵当権の効力自体は分離物に及ぶが、第三者に対する対抗力は喪失する」とされている。
 この考え方によれば第三者がA銀行に対する個人的な嫌がらせ目的で、Bをして抵当山林から伐採木材を別の場所に搬出させた後に、Bから木材を買い引渡しを受けた場合において、A銀行は、適切な維持管理をBに期待できないなどの特別の事情のない限り、第三者に対して自己への引渡しを求めることができない。 (難問)
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5
28
4
 抵当権の効力は、常に、抵当不動産から生じた果実にも及ぶ。(基礎)

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09
29
1
 抵当権の効力は、抵当不動産の差押えがあった後に限り、抵当不動産から生じる天然果実に及ぶ。(5-28-4の応用)

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20
31
3
 AはBに金銭を貸し付け、この貸金債権を担保するためにB所有の土地の上に建っているB所有の建物に抵当権の設定を受けて、その登記を備えた。
 抵当権設定後にBが同抵当建物をEに賃貸した場合、BのAに対する債務不履行後に生じた賃料について抵当権の効力が及ぶので、抵当権の実行としてAはこの賃料から優先的に弁済を受けることができる。(09-29-1の類型)

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 従たる権利
 抵当権は、抵当権不動産の従たる権利、たとえば抵当権が設定された建物においてはその建物を所有するために必要な敷地の賃借権にもその効力は及ぶ。
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30
2
 借地上の建物に抵当権が設定された場合において、その建物の抵当権の効力は、特段の合意がない限り借地権には及ばない。

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26
30
1
 対抗要件を備えた抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され、譲受人が第三者に対する対抗要件を備えた後であっても、第三債務者がその譲受人に対して弁済する前であれば、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。(発展)

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26
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2
 対抗要件を備えた抵当権者が、物上代位権の行使として目的債権を差し押さえた場合、第三債務者が債務者に対して反対債権を有していたとしても、それが抵当権設定登記の後に取得したものであるときは、当該第三債務者は、その反対債権を自働債権とする目的債権との相殺をもって、抵当権者に対抗することはできない。(発展)

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5
 抵当権者は、抵当不動産につき債務者が有する賃料債権に対して物上代位権を行使することができるが、同不動産が転貸された場合は、原則として、賃借人が転借人に対して取得した転賃貸料債権を物上代位の目的とすることはできない。(発展)

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30
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4
  抵当不動産が転貸された場合、抵当権者は、原則として、転貸料債権(転貸賃料請求権)に対しでも物上代位権を行使することができる。(26-30-5の類型)

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30
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3
 買戻特約付売買の買主が目的不動産について買主の債権者のために抵当権を設定し、その旨の登記がなされたところ、その後、売主が買戻権を行使した場合、買主が売主に対して有する買戻代金債権につき、上記抵当権者は物上代位権を行使することができる。(発展)

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2.抵当権の各論
 抵当権の順位(373条)
 「同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後による」
 抵当権の順位の変更(374条)
 「抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない」
 「2項 前項の規定による順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない」
 抵当権の被担保債権の範囲(375条)
 「抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の二年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。
 ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない」
 「2項 前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合におけるその最後の二年分についても適用する。
 ただし、利息その他の定期金と通算して二年分を超えることができない」
 抵当権の処分(376条)
 「抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる」
チョッと補足
 被担保債権と抵当権は一体のものであるが、以下のようなものに限って、抵当権の処分を認めている。(いずれも被担保債権とは切り離した抵当権のみについての処分である)
@ 転抵当(前段):抵当権者Aが債務者Xに対して持っている抵当権を、AがYに対して負っている他の債務の担保とすること。この場合、Yが抵当権を実行すれば、Yはもとの被担保債権額を限度に優先的に配当を受け、残りがある場合にAが配当を受ける。
A 抵当権の譲渡(後段その1):抵当権者Aが債務者Xに対して持っている抵当権を、同一の債務者Xに対する(抵当権を持っていない)他の債権者Dにその抵当権を譲渡すること。この場合、Aはもはや抵当権者ではなくなる。
A'抵当権の放棄(後段その1):抵当権者Aが債務者Xに対して持っている抵当権を、同一の債務者Xに対する(抵当権を持っていない)他の債権者Dに対して優先弁済の地位を放棄する。
 つまり、Aが受けるべきであった配当額をDも受けることができ、A・D間で債権額の割合で分配する。
B抵当権の順位の譲渡(後段その2):抵当権者Aが債務者Xに対して持っている抵当権について、その順位を、後順位の抵当権者Cと入れ替わる。
 つまり、Aが受けるべきであった配当額とCが受けるべきであった配当額の合計について、まずCが優先し、残りをAが受ける。
B'抵当権の順位の放棄(後段その2):抵当権者Aが債務者Xに対して持っている抵当権について、その順位を、後順位の抵当権者Cと同じとする。
 つまり、Aが受けるべきであった配当額とCが受けるべきであった配当額の合計について、A・C間で債権額の割合で分配する。
 債権者A(1番抵当権者(400円)、債権者B(2番抵当権者(300円)、債権者C(3番抵当権者(600円)、債権者D(抵当権なし、600円)
 競売売却代金が1,000円
通常  A=400円、B=300円、C=300円、D=0円
@  A+Y=400円(YがAに対して持つ債権額が400円以上の場合、Y=400円、A=0円、同じく350円の場合、Y=350円、A=50円)
 B=300円、C=300円、D=0円
A  D=400円、B=300円、C=300円、A=0円
A'  A+D=400円(A=400×400/(400+600)=160円、D=400×600/(400+600)=240円)、B=300円、C=300円
B  A+C=700円(C=600円(優先)、A=100円(残り))、B=300円、D=0円
B'  A+C=700円(A=700×400/(400+600)=280円、C=700×600/(400+600)=420円)、B=300円、D=0円

 「2項 前項の場合において、抵当権者が数人のためにその抵当権の処分をしたときは、その処分の利益を受ける者の権利の順位は、抵当権の登記にした付記の前後による」
 抵当権の処分の対抗要件(377条)  
 「前条の場合には、467条の規定に従い、主たる債務者に抵当権の処分を通知し、又は主たる債務者がこれを承諾しなければ、これをもって主たる債務者、保証人、抵当権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができない」
 「2項 主たる債務者が前項の規定により通知を受け、又は承諾をしたときは、抵当権の処分の利益を受ける者の承諾を得ないでした弁済は、その受益者に対抗することができない」  
 代価弁済(378条)
 「抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する」
 ⇒抵当に入っている不動産を買った第三取得者に対して、抵当権者が「その売買代金を自分によこせ」と請求し、これに応じた場合は、その抵当権は消滅する。
 抵当権消滅請求(379条)
 「抵当不動産の第三取得者は、383条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる」
 ⇒抵当に入っている不動産を買った第三取得者に対して、抵当権者が「売買代金をよこせ」と請求しない場合であっても、第三取得者のほうから、「売買代金を払うから、抵当権を抹消してくれ」と請求することができる。
 消滅請求ができない者(380条)
 「主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない」  
 ⇒主たる債務者、保証人などは、抵当権のもとになっている借金を払えばそれで済む話である。
 抵当権消滅の時期(382条)
 「抵当不動産の第三取得者は、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前に、抵当権消滅請求をしなければならない」 
 抵当権消滅請求の手続(383条)
 「抵当不動産の第三取得者は、抵当権消滅請求をするときは、登記をした各債権者に対し、次に掲げる書面を送付しなければならない」
 @取得の原因及び年月日、譲渡人及び取得者の氏名及び住所並びに抵当不動産の性質、所在及び代価その他取得者の負担を記載した書面  
 A抵当不動産に関する登記事項証明書(現に効力を有する登記事項のすべてを証明したものに限る)
 B債権者が2箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないときは、抵当不動産の第三取得者が1号に規定する代価又は特に指定した金額を債権の順位に従って弁済し又は供託すべき旨を記載した書面。  
⇒抵当に入っている不動産を買った第三取得者が抵当権消滅請求をする場合は、Bにあるように、
 「債権者が、2カ月以内に競売にかけない(つまり、抵当権の抹消請求に応じてくれる)場合は、「購入代金あるいはこれに代わる指定代金を払いますよなどと書いた書面を送付する」必要がある。
 債権者のみなし承諾(384条)
 「次に掲げる場合には、前条各号に掲げる書面の送付を受けた債権者は、抵当不動産の第3取得者が同条3号に掲げる書面に記載したところにより提供した同号の代価又は金額を承諾したものとみなす」
 @その債権者が前条各号に掲げる書面の送付を受けた後2箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないとき
 Aその債権者が前号の申立てを取り下げたとき。
 B第一号の申立てを却下する旨の決定が確定したとき。
 C第一号の申立てに基づく競売の手続を取り消す旨の決定が確定したとき。 
 抵当権の消滅
 抵当権の消滅時効(396条)
 「抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない」

 付従性(ふしゅうせい)
 担保物権の成立、変更、消滅は、主たる債務と運命を共にする、被担保債権がなければ担保物権は成立せず、被担保債権消滅すれば担保物権も消滅するという性質、
 抵当不動産の時効取得による抵当権の消滅(397条)
 「債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する」
⇒債務者又は抵当権設定者は、債務の本旨に沿った弁済などにより被担保債権を消滅させない限り、抵当権は時効によっては消滅しない。
09
29
4
 同一の不動産に複数の抵当権を設定することはできない。 (基礎)
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正しい 誤り
5
28
2
 債権者は、後順位抵当権であることを承知して設定することがあるが、この場合、一度設定された順位は変更することができない。(09-29-4の発展)

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正しい 誤り
21
29
 Aに対して債務を負うBは、Aのために、自己が所有する土地に抵当権を設定した(他に抵当権者は存在しない)。
 BがAに対し、残存元本に加えて、最後の2年分の利息および遅延損害金を支払った場合には、Aの抵当権は、確定的に消滅する。(基礎)

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正しい 誤り
30
30
5
 抵当権者が、被担保債権について利息および遅延損害金を請求する権利を有するときは、抵当権者は、原則として、それらの全額について優先弁済権を行使することができる。

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正しい 誤り
21
29
 Aに対して債務を負うBは、Aのために、自己が所有する土地に抵当権を設定した(他に抵当権者は存在しない)。
 第三者Cが、土地の所有権を時効によって取得した場合には、Aの抵当権は、確定的に消滅する。

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正しい 誤り
7
29
4
 抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とすることができる。(基礎)

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正しい 誤り
16
27
3
 抵当不動産について所有権を取得した第三者は、抵当権者に対して抵当権消滅請求をすることができるが、抵当権者は、これに対し、抵当権消滅請求を受けた後2か月内に、通常と同様の手続で競売の申立てをすることができる。

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正しい 誤り
 賃


























2.4 賃貸借と抵当権の関係
 抵当建物使用者の引渡しの猶予(395条)
 「抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるものは、その建物の競売における買受人の買受けの時から6箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない」
 @競売手続の開始前から使用又は収益をする者
 A強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者。
 「2項 前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその1月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用しない」
 抵当権者の同意の登記がある場合の賃貸借の対抗力(387条)
 「登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる」
 「2項 抵当権者が前項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない」

(1)抵当権の設定登記_ - 前から成立しており、対抗要件を備えている(登記をしている、引渡しが済んでいる)賃借権:
・抵当権に優先する。
・抵当権の実行(競売)がされたとしても、競売の買受人に対して賃借権を主張できる。
(2)抵当権の設定登記後に成立した賃借権
@原則:抵当権の実行(競売)がされると、賃借権を失う。
 ただし、一定の要件(395条@、A)を満たす者は、6ヶ月間引渡しが猶予される。
 (注)短期賃貸借権(建物で3年以内、土地で5年以内)であれば、その期間だけは賃借権を主張できる。とあった旧395条は平成15年に廃止となった。
A例外:
 賃借権の登記を行い、かつ優先する抵当権者全員の同意とその旨の登記を行えば、抵当権の実行に対して対抗できる。
20
31
4
 AはBに金銭を貸し付け、この貸金債権を担保するためにB所有の土地の上に建っているB所有の建物に抵当権の設定を受けて、その登記を備えた。
 抵当権設定登記後にBが同抵当建物をFに賃貸した場合、対抗要件を備えた短期の賃貸借であっても、賃借人Fは抵当権実行による買受人Gに対抗できない。

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正しい 誤り
16
27
5
 登記された賃貸借は、その登記前に抵当権の登記をしている抵当権者のすべてが、その賃借権に対抗力を与えることに同意し、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。

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正しい 誤り
16
27
2
 抵当権者に対抗することができない賃貸惜に基づく抵当建物の占有者が、競売手続の開始前よりその建物を使用または収益をなしているときは、建物の占有者は、建物の競売による買受けの時から6か月間は、買受人に対して建物を引き渡すことを要しない。

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正しい 誤り
20
31
5
 AはBに金銭を貸し付け、この貸金債権を担保するためにB所有の土地の上に建っているB所有の建物に抵当権の設定を受けて、その登記を備えた。
 抵当権設定登記後にBが同抵当建物をHに賃貸し てHがその旨の登記を備えた場合、抵当権実行による買受人Iからの明渡請求に対して、賃借人Hは、明渡しまでの使用の対価を支払うことなく、6か月の明渡猶予期間を与えられる。

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正しい 誤り
21
30
 Hは甲建物を抵当権の実行による競売により買い受けたが、甲建物には、抵当権設定後に従前の所有者より賃借したIが居住している。HはIに対し、相当の期間を定めて甲建物の賃料1ヶ月分以上の支払いを催告したが、期間経過後もIが賃料を支払わない場合には、Hは買受け後6ヶ月を経過した後、Iに対して建物の明け渡しを求めることができる。

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正しい 誤り


















2.5 法定地上権(388条)
 「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める」
 法定地上権の背景
 ある人Aが土地と建物を所有していたが、抵当権を設定していた土地に抵当権が実行(競売)されて、他の人Bがこれを買い受けて所有権を取得した。
 すると、Aは建物を所有してはいるが、土地の利用権を取得しない限り、建物は使用できないばかりか、不法占拠となるのでこれを取り壊すしかないことになってしまう。
 そこで、このような不経済を防止するため、一定の条件の元で、Aに地上権を認めたのが法定地上権である。
 法定地上権が認められるための条件  
@抵当権を設定した時に、
 ・土地の上に建物があり、
 ・同じ人が土地と建物を所有(登記の有無、登記名義とは関係ない)していた。
Aその後、競売された結果、土地と建物の所有者が別々になった。
⇒競売前に建物が滅失し、再築された場合でも成立
⇒競売前に土地または建物が譲渡され、所有者が別人になったとしても成立する
 土地と建物の所有者が当初から別人である場合 
 建物所有者は借地権を有しているので、もし、建物に抵当権が設定され、競売されたときでも、買受人は建物の所有権と借地権を取得できる。
 共有の場合
@パターン1:共有地に単独建物
 ・土地(自分の持分権)に抵当権設定 ⇒ 法定地上権なし
 ・建物に抵当権設定         ⇒ 法定地上権なし
Aパターン2:単独地に共有建物
 ・土地に抵当権設定         ⇒ 建物全体に法定地上権有
 ・建物(自分の持分権)に抵当権設定   ⇒ 建物全体に法定地上権有
13
28
2
 Aは、Bに対する債務を担保するため、BのためにA所有の甲地に抵当権を設定し、この抵当権が実行されてCが甲地を買い受けた。
 抵当権設定当時甲地にA所有の建物が建っていたが、Aが抵当権設定後この建物をDに譲渡し、Dのために甲地に賃借権を設定した場合、この建物のために法定地上権は成立しない。(基礎)

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正しい 誤り
20
31
2
 AはBに金銭を貸し付け、この貸金債権を担保するためにB所有の土地の上に建っているB所有の建物に抵当権の設定を受けて、その登記を備えた。
 抵当権設定時にB所有の土地の登記名義はCであった場合でも、抵当権実行により買受人Dのために法定地上権が成立する。 (応用)

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正しい 誤り
13
28
1
 Aは、Bに対する債務を担保するため、BのためにA所有の甲地に抵当権を設定し、この抵当権が実行されてCが甲地を買い受けた。
 抵当権設定当時甲地にA所有の建物が建っていたが、Aが抵当権設定後この建物を取り壊して旧建物と同一規模の新建物を建てた場合、新建物のために法定地上権は成立しない。(応用)

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正しい 誤り
23
30
4
 Aが自己所有の土地と建物に共同抵当権を設定した後、建物が滅失したため、新たに建物を再築した場合において、Aが抵当権に被担保債権について弁済することができなかったので、土地についての抵当権が実行され、その土地は買受人Bが取得した。この場合、再築の時点での土地の抵当権者が再築建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたなどの特段の事由のない限り、再築建物のための法定地上権は成立しない。(13-28-1の応用)

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正しい 誤り
13
28
5
 Aは、Bに対する債務を担保するため、BのためにA所有の甲地に抵当権を設定し、この抵当権が実行されてCが甲地を買い受けた。
 抵当権設定当時甲地にはA所有の建物が建っていたが、この建物が地震で倒壊したため、抵当権者の承諾を得て建物を建築することになっていた場合、競売後に建物が建築されれば、その建物のために法定地上権が成立する。(13-28-1の応用)

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正しい 誤り
23
30
2
 AがBから土地を借りてその土地上に建物を所有している場合において、Bは、その土地上に甲抵当権を設定したが、Aから建物を取得した後に、さらにその土地に乙抵当権を設定した。その後、Bは、甲抵当権の被担保債権について弁済したので甲抵当権は消滅したが、乙抵当権の被担保債権については弁済できなかったので、乙抵当権が実行され、その土地は買受人Cが取得した。
 この場合、この建物のために法定地上権は成立しない。(発展)

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正しい 誤り
23
30
3
 AがBから土地を借りてその土地上に建物を所有している場合において、Aは、その建物上に甲抵当権を設定したが、Bから土地を取得した後に、さらにその建物に乙抵当権を設定した。その後、Aは、甲抵当権の被担保債権について弁済できなかったので、甲抵当権が実行され、その建物は買受人Cが取得した。
 この場合、この建物のために法定地上権は成立しない。(発展)

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正しい 誤り
13
28
3
 Aは、Bに対する債務を担保するため、BのためにA所有の甲地に抵当権を設定し、この抵当権が実行されてCが甲地を買い受けた。
 抵当権設定当時甲地にはE所有の建物が建っていたが、抵当権設定後この建物をAが買い受け、抵当権実行当時この建物はAの所有となっていた場合、この建物のために法定地上権は成立しない。(基礎)

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正しい 誤り
令元
30
 Aは、自己の債務の担保としてA所有の甲土地に抵当権を設定したが、それ以前に賃借権に基づいて甲土地に丙建物を築造していたCからAが当該抵当権の設定後に丙建物を買い受けた場合において、抵当権が実行されたときは、丙建物のために、地上権が甲土地の上に当然に発生する。 (13-28-3の類型)

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正しい 誤り
13
28
4
 Aは、Bに対する債務を担保するため、BのためにA所有の甲地に抵当権を設定し、この抵当権が実行されてCが甲地を買い受けた。
 Bのための一番抵当権設定当時甲地は更地であったが、Fのために二番抵当権が設定される前に甲地に建物が建てられた場合、Fの申立てに基づいて土地抵当権が実行されたときは、この建物のために法定地上権が成立する。(13-28-3の応用) 

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正しい 誤り
23
30
5
 AとBが建物を共同で所有し、Aがその建物の敷地を単独で所有している場合において、Aがその土地上に抵当権を設定したが、抵当権の被担保債権について弁済できなかったので、その抵当権が実行され、その土地は買受人Cが取得した。
 この場合、この建物のために法定地上権は成立しない。(発展)

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正しい 誤り
26
29
 A、BおよびCは費用を出し合って、別荘地である甲土地および同地上に建造された乙建物を購入し、持分割合を均等として共有名義での所有権移転登記を行った。また、Cの債務を担保するため、A、BおよびCが、各人の甲土地にかかる持分につき、Cの債権者Fのために共同抵当権を設定していたところ、抵当権が実行され、Gが全ての持分を競落した。この場合には、乙建物のために法定地上権が成立する。(発展)

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正しい 誤り













2.6 一括競売(389条)
 「抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。
  ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる」
 
@更地に抵当権が設定され、その後にその更地の上に建物が建てられた場合、抵当権者は土地と建物を一括して競売することができる。
⇒一括するか土地だけ競売するかは自由。よって、建物の売却代金からの弁済には優先権はない。
A一括競売されなかったとしても、その建物の所有者には法定地上権がないので、その建物に引き続き住むことはできない。(ただし、2項の例外規定あり)
 「2項 前項の規定は、その建物の所有者が抵当地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有する場合には、適用しない」
16
27
4
 抵当権設定後に抵当地に建物が築造された場合に、その建物が抵当権設定者以外の者によって築造されたときは、土地の抵当権者は、抵当地と共に一括してその建物を競売することはできない。 (基礎)

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正しい 誤り
23
30
1
  Aは、自己所有の土地(更地)に抵当権を設置した後に、その土地上に建物を建築したが、抵当権の被担保債権について弁済をすることができなかった。
 この場合において、抵当権者が抵当権を実施して土地を競売すると、この建物のために法定地上権は成立せず建物は収去されなければならなくなることから、抵当権者は、土地とその上の建物を一括して競売しなければならない。(応用)

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正しい 誤り










2.7 共同抵当
 共同抵当における代価の配当(392条)
 「債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、同時にその代価を配当すべきときは、その各不動産の価額に応じて、その債権の負担を按分する」
 「2項 債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、ある不動産の代価のみを配当すべきときは、抵当権者は、その代価から債権の全部の弁済を受けることができる。
 この場合において、次順位の抵当権者は、その弁済を受ける抵当権者が前項の規定に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として、その抵当権者に代位して抵当権を行使することができる」
5
28
5
 抵当権は、一つの債権につき一つしか設定することができない。(基礎)

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正しい 誤り
18
30
4
  Aは、B所有の甲土地について地上権の設定を受けて、同土地上に乙建物を建築した。Aが同建物を建築するについては、そのための資金としてC銀行から融資を受けた。
 AのC銀行に対する債務の担保のために、Aが乙建物についてC銀行のために抵当権を設定するとともに、Bが物上保証人として甲土地についてC銀行のために抵当権を設定していた場合において、C銀行が抵当権を実行するには、まず乙建物から行う必要はない。(発展)

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3.根抵当
 根抵当権(398条の2)
 「抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権極度額の限度において担保するためにも設定することができる」
 「2項 前項の規定による抵当権(根抵当権)の担保すべき不特定の債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して、定めなければならない」
 「3項 特定の原因に基づいて債務者との間に継続して生ずる債権、手形上若しくは小切手上の請求権又は電子記録債権は、前項の規定にかかわらず、根抵当権の担保すべき債権とすることができる。 
根抵当権とは
@根抵当権とは、「一定の範囲に属する不特定の債権、極度額の限度において担保するためにも設定された担保物権。
 具体的には、取引の繰り返しなどにより発生する「不特定な債権」を担保するもの。
 たとえば、A食品工場がBスーパーマーケットに反復継続的に商品を納入し、その売上債権を個々にではなく全体として常に担保したい場合など。
A抵当権の1種であり、根抵当権特有の規定がない場合は、抵当権に規定が適用される。
B抵当権と違って、付従性がない。被担保債権がなくても根抵当権は成立し、被担保債権が一時的に全部消滅しても、将来(確定期日までに)発生するかもしれない債権のために、根抵当権は消滅せず続く。
C根抵当権の設定時には、以下を定めておく。
(a)担保すべき債権の範囲:原則として、債務者との取引によって直接に生じる債権(取引債権)であるべき。
398条の2の2項前段:特定の継続的取引契約(当座預金残高を超えての小切手・手形の振出し、継続的な手形割引、継続的な商品の売買などの契約)
・398条の2の2項後段:一定の種類の取引によって生ずるもの(銀行取引、石油供給取引など)
398条の2の3項:特定の原因に基づいて債務者との間に継続して生ずる債権(継続的に生じる損害賠償請求権など)と手形上・小切手上の請求権、電子記録債権
(b)極度額:優先して弁済を受けられる限度額であり、元本だけでなく利息、債務履行の遅延による損害賠償金なども含まれる。
(c)債務者
(d)確定期日についても合意すれば、定めることができる。
D根抵当権契約の変更
(a)被担保債権の範囲・債務者の変更:元本確定前であれば変更可能。後順位抵当権者、第三者の承諾は不要であるが登記が必要。
(b)極度額の変更:元本確定前、後でも変更可能。ただし利害関係者の承諾と登記が必要。
(c)確定期日の変更:期日前に登記することにより可能。
 根抵当権の被担保債権の範囲398条の3)
 「根抵当権者は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として、その根抵当権を行使することができる」
 「2項 債務者との取引によらないで取得する手形上若しくは小切手上の請求権又は電子記録債権を根抵当権の担保すべき債権とした場合において、次に掲げる事由があったときは、その前に取得したものについてのみ、その根抵当権を行使することができる。ただし、その後に取得したものであっても、その事由を知らないで取得したものについては、これを行使することを妨げない」
@債務者の支払の停止
A債務者についての破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は特別清算開始の申立て
B抵当不動産に対する競売の申立て又は滞納処分による差押え
 根抵当権の被担保債権の範囲及び債務者の変更(398条の4)
 「元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができる。債務者の変更についても、同様とする」
 「2項 前項の変更をするには、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない」
 「3項 1項の変更について元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす」
 根抵当権の極度額の変更(398条の5)
 「根抵当権の極度額の変更は、利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができない」
  根抵当権の元本確定期日の定め(398条の6)
 「根抵当権の担保すべき元本については、その確定すべき期日を定め又は変更することができる」
 「2項 398条の4の2項の規定(後順位の抵当権者その他の第三者の承諾は不要)は、前項の場合について準用する」
 「3項 1項の期日は、これを定め又は変更した日から5年以内でなければならない」
 「4項 1項の期日の変更についてその変更前の期日より前に登記をしなかったときは、担保すべき元本は、その変更前の期日に確定する」 

  根抵当権の被担保債権の譲渡等(398条の7法改正(R02.04.01、3項追加、4項は旧3項の修正)
 「元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない。元本の確定前に債務者のために又は債務者に代わって弁済をした者も、同様とする」
  「2項 元本の確定前に債務の引受けがあったときは、根抵当権者は、引受人の債務について、その根抵当権を行使することができない」
 「3項 元本の確定前に免責的債務引受があった場合における債権者は、472条の4(免責的債務引受による担保の移転)の1項の規定にかかわらず、根抵当権を引受人が負担する債務に移すことができない」
 「4項 元本の確定前に債権者の交替による更改があった場合における更改前の債権者は、518条(更改後の債務への担保の移転)1項の規定にかかわらず、根抵当権を更改後の債務に移すことができない。元本の確定前に債務者の交替による更改があった場合における債権者も、同様とする」

(1)根抵当権には随伴性がない(個々の被担保債権が移転しても、根抵当権は被担保債権に伴って移転しない)ことから、根抵当権が確定するまでの間は、個々の被担保債権の譲渡、代位弁済、債務引受、更改が生じても、根抵当権には影響がない。
@1項:元本の確定前に債権譲受、代位弁済があったとしても、これらの者が根抵当権を行使することはできない。
A2項:元本の確定前に債務の引受けがあったとき、引受人が債務を弁済しないとしても、根抵当権者は、根抵当権を行使することはできない。、
B3項(新規):元本の確定前に免責的債務引受があった場合における債権者は、根抵当権を引受人が負担する債務に移すことができない。
472条の4(免責的債務引受による担保の移転)は、あくまでも、個々の被担保債権に関連する担保の移転の話である。
C4項:元本の確定前に債権者の交替による更改があっても、旧債権者は、根抵当権を更改後の債務に移すことができない。また、債務者の交替による更改があっても、債権者は、根抵当権を更改後の債務に移すことができない。
 根抵当権の処分(398条の11)  
 「元本の確定前においては、根抵当権者は、376条1項の規定による根抵当権の処分をすることができない。ただし、その根抵当権を他の債権の担保とすることを妨げない 」
⇒元本の確定前においては、
 転抵当、すなわち根抵当権者Aが債務者Xに対して持っている根抵当権を、AがYに対して負っている他の債務の担保とすることはできるが、376条1項にあるような 抵当権の譲渡あるいは放棄(抵当権者Aが債務者Xに対して持っている抵当権を、同一の債務者Xに対する(抵当権を持っていない)他の債権者に譲渡あるいは優先弁済の地位を放棄すること、又は、抵当権の順位の譲渡あるいは順位の放棄はできない。
⇒元本の確定後であれば、376条1項にあるような、 抵当権の譲渡・放棄、抵当権の順位の譲渡・順位の放棄はできる。
 「2項 377条2項の規定は、前項ただし書の場合において元本の確定前にした弁済については、適用しない」
⇒根抵当権を転抵当した場合において、元本の確定前にした弁済するときは、転抵当権者の承諾を必要としない。
 根抵当権の譲渡(398条の12)
 「元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権を譲り渡すことができる」
⇒元本の確定前であれば、根抵当権設定者の承諾を得て、根抵当権の内容(債務者、債権の範囲、極度額)全部を譲受人に譲渡できる。
  「2項 根抵当権者は、その根抵当権を2個の根抵当権に分割して、その一方を前項の規定により譲り渡すことができる。この場合において、その根抵当権を目的とする権利は、譲り渡した根抵当権について消滅する」
⇒元本の確定前であれば、根抵当権設定者の承諾を得て、同一順位の二つの根抵当権に分割して(極度額のみ分割、その他は同じ内容)、その一つを譲渡人に譲渡できる。
 またこの場合、分割する前の根抵当権に対して転抵当権が設定されていた場合、分割譲渡された譲受人のもつ根抵当権については転抵当権は及ばなくなるので、その転抵当権者の承諾も必要とする。(3項)
 「3項 前項の規定による譲渡をするには、その根抵当権を目的とする権利を有する者の承諾を得なければならない」
 根抵当権の一部譲渡(398条の13)
 「元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権の一部譲渡(譲渡人が譲受人と根抵当権を共有するため、これを分割しないで譲り渡すことをいう)をすることができる」
⇒元本の確定前であれば、根抵当権設定者の承諾を得て、根抵当権の内容(債務者、債権の範囲、極度額など)を譲渡人と譲受人で共有することができる。
チョッと補足
@元本確定前の債権譲渡は根抵当権そのものには影響ない。つまり、それら債権の譲受人は、無担保の債権を獲得するだけであって、根抵当権を行使することはできない。(398条の7)
⇒元本確定後に債権譲渡を受けると、通常の抵当権と同じく、根抵当権も取得することになるので、これを行使することができる。
A元本確定前の根抵当権は被担保債権とは独立した交換価値のある枠の支配権と考えることができるもので、抵当権を被担保債権とは切り離して、根抵当権(枠支配権)を全部譲渡(398条の12の1項)、分割譲渡(同2項)、一部譲渡(398条の13)することは可能である。
B全部譲渡(肩代わり融資):A(債権者)ーB(債務者)間との間の根抵当権を、AがYに債務者、債権の範囲、極度額全部について譲渡すると、YはY-B間における定められた範囲の債権について、極度額を上限とした根抵当権を獲得することになり、譲渡前のY-B間の債権も範囲内のものであれば担保される。この場合、A-B間の債権は移転しないが、Aの担保権はなくなる。
⇒Yが全部譲渡を受けた際に、被担保債権の範囲や債務者の変更を行うことができれば、極度額という枠の担保価値支配権を自由に利用できるようにもなる。
C分割譲渡(協調融資):A(債権者)ーB(債務者)間との間の根抵当権を、AがYに債務者、債権の範囲はそのままで、極度額のみをふたつに分割して(分割後の極度額を定め)、そのうちのひとつを譲渡する。
D一部譲渡(より緊密な協調融資):A(債権者)ーB(債務者)間との間の根抵当権について、債務者、債権の範囲、極度額をAがYと共有する。(極度額を限度に、AとYが債権額に応じて配当を受ける)

 根抵当権の元本の確定請求(398条の19)
 「根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から3年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができる。
 この場合において、担保すべき元本は、その請求の時から2週間を経過することによって確定する」
 「2項 根抵当権者は、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができる。
 この場合において、担保すべき元本は、その請求の時に確定する」
 「3項 前2項の規定は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがあるときは、適用しない」  
 根抵当権の元本の確定事由(398条の20)
 「次に掲げる場合には、根抵当権の担保すべき元本は、確定する。
@根抵当権者が抵当不動産について競売若しくは担保不動産収益執行又は372条において準用する304条の規定による差押えを申し立てたとき。ただし、競売手続若しくは担保不動産収益執行手続の開始又は差押えがあったときに限る。
A根抵当権者が抵当不動産に対して滞納処分による差押えをしたとき。
B根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始又は滞納処分による差押えがあったことを知った時から二週間を経過したとき。
C債務者又は根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき。
チョッと補足
@元本の確定
・「不特定な債権」の債権の元本額を確定させる。これにより、その後に発生する元本債権は担保されなくなる。つまり、確定後は、通常の抵当権と同じような性格となる。
・確定期日はあらかじめ定めることもできるし、変更することもできる。(利害関係を有する者等の承諾はいらないが、登記を要する)
・確定期日を定めなかった場合は、根抵当権設定者は3年経過後に、確定を請求することができ、根抵当権者はいつでも請求できる。
 根抵当権の極度額の減額請求(398条の21
 「元本の確定後においては、根抵当権設定者は、その根抵当権の極度額を、現に存する債務の額と以後2年間に生ずべき利息その他の定期金及び債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求することができる」

・根抵当権は、元本額の確定後は、通常の抵当権と同じような性格となるが、375条2項「債務不履行による損害賠償請求権を最後の2年分に限定する」に対応する規定がないので、根抵当権者が意図的に、根抵当権を行使しないで、遅延賠償金を膨らませる(最大で、債務額の合計が極度額になるまで)こともあいうる。
 このため、根抵当権設定者を保護するために、極度額を
・現に存する債務の額+以後2年間に生ずべき利息、その他の定期金、債務不履行による損害賠償の額
に減額請求できる。
 この請求を行えば、実質的には375条2項と同じ扱いとなる。
 根抵当権の消滅請求(398条の22)
 「元本の確定後において現に存する債務の額が根抵当権の極度額を超えるときは、他人の債務を担保するためその根抵当権を設定した者又は抵当不動産について所有権、地上権、永小作権若しくは第三者に対抗することができる賃借権を取得した第三者は、その極度額に相当する金額を払い渡し又は供託して、その根抵当権の消滅請求をすることができる。この場合において、その払渡し又は供託は、弁済の効力を有する」
10
29
1
 根抵当権の被担保債権は、債務者との特定の継続的取引契約から生ずる債権に限られる。(基礎)

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正しい 誤り
10
29
3
 根抵当権者は、元本が確定したときに存在する被担保債権の元本についてのみ、極度額を限度として、優先弁済を受けることができる。

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正しい 誤り

2
29
1
 根抵当権の被担保債権の範囲は、確定した元本および元本確定後の利息その他の定期金の2年分である。

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正しい 誤り
10
29
2
 根抵当権の設定に当たっては、元本の確定期日を定めることを要し、この定めのない根抵当権の設定は、他の債務者を害するおそれがあるので無効である。

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正しい 誤り


















10
29
4
 元本の確定前においては、根抵当権の被担保債権の範囲を変更することができるが、この場合、後順位の抵当権者の承諾は不要である。

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正しい 誤り

2
29
2
 元本確定前においては、被担保債権の範囲を変更することができるが、後順位抵当権者その他の第三者の承諾を得た上で、その旨の登記をしなければ、変更がなかったものとみなされる。 (10-29-4の類型)

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正しい 誤り
28
31
1
 Aは債権者Bのため、A所有の甲土地に、被担保債権の範囲をA・B間の継続的売買に係る売掛代金債権とし、その極度額を1億円とする根抵当権を設定した。この場合において、 元本確定前に、A・Bは協議により、被担保債権の範囲にA・B間の金銭消費貸借取引に係る債権を加えることで合意した。
 A・Bがこの合意を後順位抵当権者であるCに対抗するためには、被担保債権の範囲の変更についてCの承諾が必要である。 (10-29-4の類型)

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正しい 誤り








2
29
  元本確定前に根抵当権者から被担保債権を譲り受けた者は、その債権について根抵当権を行使することができないが、元本確定前に被担保債務の免責的債務引受があった場合には、根抵当権者は、引受人の債務について、その根抵当権を行使することができる。

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正しい 誤り









10
29
5
 元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得なくても、その根抵当権を譲渡することができる。  

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正しい 誤り
28
31
3
 Aは債権者Bのため、A所有の甲土地に、被担保債権の範囲をA・B間の継続的売買に係る売掛代金債権とし、その極度額を1億円とする根抵当権を設定した。この場合において、元本確定前においては、Bは、甲土地に対する根抵当権をAの承諾を得てEに譲り渡すことができる。 (10-29-5の類型)

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正しい 誤り
28
31
2


 Aは債権者Bのため、A所有の甲土地に、被担保債権の範囲をA・B間の継続的売買に係る売掛代金債権とし、その極度額を1億円とする根抵当権を設定した。この場合において、元本確定前に、Bが、Aに対して有する継続的売買契約に係る売掛代金債権をDに対して譲渡した場合、Dは、その債権について甲土地に対する根抵当権を行使することはできない。

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正しい 誤り
元本の確定
2
29
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 元本確定期日は、当事者の合意のみで変更後の期日を5年以内の期日とする限りで変更することができるが、変更前の期日より前に変更の登記をしなければ、変更前の期日に元本が確定する。

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16
27
1
 根抵当権者は、元本確定期日の定めがある場合を除き、いつでも担保すべき元本の確定を請求することができ、この請求があったときには、その請求の時に担保すべき元本が確定する。

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21
29
 Aに対して債務を負うBは、Aのために、自己が所有する土地に抵当権を設定した(他に抵当権者は存在しない)。
 Aの抵当権が根抵当権である場合において、Bが破産手続開始の決定を受けたときは、被担保債権は確定して満足し、根抵当権は確定的に消滅する。

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28
31
4
 Aは債権者Bのため、A所有の甲土地に、被担保債権の範囲をA・B間の継続的売買に係る売掛代金債権とし、その極度額を1億円とする根抵当権を設定した。元本が確定し、被担保債権額が6,000万円となった場合、Aは、Bに対して甲土地に対する根抵当権の極度額1億円を、6,000万円と以後2年間に生ずべき利息その他の定期金および債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求できる。

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2
29
5
  根抵当権設定者は、元本確定後においては、根抵当権の極度額の一切の減額を請求することはできない。(28-31-4の類型)

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21
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 Aに対して債務を負うBは、Aのために、自己が所有する土地に抵当権を設定した(他に抵当権者は存在しない)。
 Aの抵当権が根抵当権である場合において、元本が確定した後に、Bから土地の所有権を取得したCが、極度額に相当する金額をAに支払い、根抵当権の消滅請求をしたときは、確定した被担保債権の額が極度額を超えていたとしても、Aの根抵当権は、確定的に消滅する。

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5
 Aは債権者Bのため、A所有の甲土地に、被担保債権の範囲をA・B間の継続的売買に係る売掛代金債権とし、その極度額を1億円とする根抵当権を設定した。その後、元本が確定し、被担保債権額が1億2,000万円となった場合、甲土地について地上権を取得したFは、Bに対して1億円を払い渡して根抵当権の消滅を請求することができる。(21ー29ーイの類型)

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